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2016.03.15

認知症・花粉症薬 iPSで医療基盤研

 

関係する細胞作製
新薬候補絞り込み効率化

 

患者が増えているのに治すのが難しかった認知症やアレルギーの治療薬をiPS細胞を使って開発する取り組みが始まった。iPS細胞から人体の様々な組織を育てる技術が進み、脳や免疫にかかわる希少な細胞を作れるようになった。試験管の中で患者の状態を再現すれば、治療効果の高い新薬候補を絞り込める。国民病ともいえる病気への備えが求められるなか、新たな治療法の研究に弾みがつきそうだ。認知症やアレルギーは脳や免疫の働きが複雑に絡み、新薬開発のハードルが高い。

 

アルツハイマー型認知症は、まず脳に薬が届かない難題に直面する。脳を巡る血管で門番役を担う細胞が脳に欠かせない成分は取り込み、不要な物質は通さない。飲み薬や注射で血管に有効成分を入れても、毒物とみなして脳へ浸透するのを阻む。体を守る安全システムの一つだが、新薬開発の大きな壁になっている。国立研究開発法人の医薬基盤・健康・栄養研究所は、人のiPS細胞から門番役の細胞に新たに培養した。

 

17日に大阪市で始まる日本再生医療学会で発表する。
実験では様々な物質をそろえ、細胞が取り込むかどうかを調べる。細胞が受け入れた物質は脳内に達しやすく、治療薬の基本成分となる。認知症などを治す飲み薬や注射薬にの開発につながる。新薬を開発する道具として、5年以内に製薬企業などと活用を検討する。
研究チームは花粉症やアトピー性皮膚炎を起こす免疫細胞もiPS細胞から作製した。花粉などと反応し、鼻水や目のかゆみを引き起こす物質を出す。こうしたアレルギー反応を抑える物質を細胞を使った実験で突き止める。5年後に細胞の作製技術を製薬企業へ技術移転する。

 

脳に関する病気では理化学研究所が広島大学と共同で、体が動かなくなる病気「脊髄小脳変性症」の原因究明に使える細胞を作った。国内に2万人の患者がいる。体内で細胞が壊れる理由がわかれば、細胞の破壊を防ぎ、病気の進行を止める薬ができる。

既に治療薬の候補となる物質を探す研究を始めており、製薬企業との連携も考える。

 

高齢化社会の進展や生活習慣の変化とともに、日本ではアルツハイマー型など認知症の高齢者は2012年時点で約460万人に達し、25年には700万人に増える見通し。また日本人の3人に1人は花粉症やアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患を抱えるとされる。いずれも治療薬の潜在的な市場規模は大きく、開発効率を高める戦略が欠かせない。富士経済の予測では認知症薬の市場規模は22年に2420億円と、13年比で75%増となる見通し。また総合プランニングによると、アレルギーの市販医薬品の市場規模17年に919億円と12年比で75%増える。

 

 

患者少ない難病で先行
武田や大日本住友 京大と共同研究

 

創薬は再生医療と並ぶiPS細胞の活用法の柱だ。当初は患者数の少ない難病の研究が脚光を浴びたが、数百万人超が患う病気の治療も視野に入ってきた。製薬企業も関心を寄せている。

武田製薬工業は2015年12月、京都大学iPS細胞研究所とiPS細胞を扱う創薬などの共同研究を始めたと発表した。京大で心不全や神経難病のALS(筋委縮性側索硬化症)などをテーマに掲げる研究者が武田の研究所に常駐。4月以降は計100人異常に拡充する。ALSなどを再現した細胞を作り、化合物を加えて反応を調べ、新薬開発につなげる。

 

ヒトのiPS細胞を使えば、動物実験では気づかなかった副作用の危険もわかる。京大の基礎技術を3年後にも臨床応用する。大日本住友製薬も筋肉組織の一部が骨に変わる進行性骨化性繊維異形成症などのまれな難病の創薬に向け京大iPS細胞研究所と共同研究を進めている。患者の細胞からiPS細胞を作り、病気が進む過程を解明する。既に難病の治療薬では研究成果が出始めている。

 

京大は低身長になる難病に効く化合物iPS細胞を使って探し、難病とは全く別の高脂血症の治療薬「スタチン」が候補になる可能性を突き止めた。医療現場で難病治療に使うための臨床試験(治験)を目指す。

 

新薬開発には約10億ドル(1140億円)の投資と平均15年程度の時間がかかる。
従来は人で希少な細胞を入手できない場合、動物の細胞で新薬候補物質を試したり動物に投与したりして効き目が出る物質を探してきた。ただ動物で効き目が出ても人間では効果が出ない化合物も多く、開発中止が相次いだ。iPS細胞からの人の希少な細胞を作って有望な化合物を選別し、臨床試験(治験)で効果や安全性を確認すれば、時間と費用を節約して薬を開発できる。

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